研究概要 |
癌遺伝子・癌抑制遺伝子の発現を利用した大腸癌の診断並びに治療法の開発というテーマで研究してきたが1993年にHNPCCの原因遺伝子であるミスマッチ修復遺伝子が相次いでクローニングされたので、ミスマッチ修復遺伝子とReplication Errorについても研究を行い以下の結果を得た。 診断面の応用として家族性大腸腺腫症並びに家族性大腸癌の発症前診断についても検討した(馬塲)。 浜松医大第二外科ではFAP42家系72症例、並びにHNPCC11家系67名を追跡中であるが、FAPについては発症前診断に同意を得た患者についてAPC遺伝子の(馬塲)変異部位の確定した家系で発症前診断が可能となった。しかしなお、検出率が低いためin vitro sythesized protein assay法をPowelに準じ5症例に於いて行い発症前診断が可能であった(馬塲)。 HNPCC家系についてはなおpenetrance rateが不明なため発症前診断はなお難しい面があるため、第43回大腸癌研究会に際しアンケート調査により全国より394例のHNPCC患者を集計し、その臨床像の解析を行った。HNPCCの我が国最大家系について採血によりhMLH-1のcodon 582にCTC-GTCのミスマッチ変異を認めた。同時に行った口腔洗浄液でも同じ変異を認め、将来臨床応用の可能性を示唆する所見を得た。 colonic carcinogenesisの遺伝子変異をvillous adenoma 1UCに合併した癌とdysplasiaについて検討した(馬塲、椙村、藤田)。 治療への応用としてはFAPにおいてはgenotypeとphonotypeの関連を検討しその結果を手術術式の個別代に役立てた。HNPCCの第2癌の予測についてRERが役立つと考えられる。 大腸癌の悪性度の検索としてp53,DCC,サイトカイン(IL-1,IL6)増殖因子(VFGF)Elastase(uPA)などの解析を行い大腸癌に於いてVEGF,IL-1は共に著明な高値を示すことが明かとなった。また、VEGFのRNAを定量しVEGF121の発現が著明であった。 大腸癌肝転移巣から高転移株と低転移株を樹立し、遺伝子解析の結果、高転移株は遺伝子変異の蓄積の多いことが判明した(馬塲)。 この系を用い血管新生抑制物質TNP470を用い肝転移の予防を行ったところ、用量依存性に転移を抑制することができた。また、腫瘍移植部(盲腸)の切除後2日後よりFR118487を浸透圧ミニポンプによる持続皮下群に於いて、対照群が全例死亡したのに対し全例再発を認めず生存した。
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