研究概要 |
尿路感染症は臨床の場で最も多い感染症の一つであり、再感染および再燃を来たしやすい。また、頻回の腎感染は腎機能障害を招き、腎不全の重要な原因の一つとなっている。尿路感染症は腸内細菌を始め、グラム陰性、陽性菌の上行性感染によるが、多くの細菌は尿路上皮の特異的なレセプターに結合し、付着、定着し、感染発症の原因となる。また、細菌は相互に近接し、細菌グライコカリックスに覆われ、バイオフィルムを形成し、慢性化、難治化の原因の一つとなっている。一方、宿主側感染防御機構は尿路では抑制され、十分機能していない。このような点に着目し、慢性尿路感染症の予防および治療法の確率を目標とし、細菌線毛およびバイオフィルムと感染防御機構の相互作用を明確にし、尿路感染症、特に慢性化要因についての解析を行なった。実験腎盂腎炎モデルを確立し、抗酸化剤やライソゾーム酵素阻害剤の影響を検討した。抗酸化剤としてはVitamin C誘導体、Ebseren,SODなどを使用し、ライソゾーム酵素阻害剤としてはステロイド、ウリナスタチンなどを使用した。このような炎症Modulatorの使用により腎盂腎炎の慢性化や瘢痕形成予防効果のあることが確認された。また、抗菌剤との併用も効果的であることが見いだされた。このような事実は腎盂腎炎治療上の大きな指針を与えるものと考えられた。上記の実験尿路感染症における治療法の確立は臨床応用が可能であり、ステロイド、ウリナスタチンなどの臨床応用を考えている。このような有用性が臨床的にも証明されれば、。腎盂腎炎治療の大きな変革に繋がると考えられる。
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