歯科用金属材料の腐食疲労についての研究をスタートさせたが、今年度は疲労腐食試験機の導入と、予備実験に時間が費やされたため、本格的な実験期間は短かった。また、疲労試験は1つの試料について時間がかかるため、まだ全体的にまとまっていない。しかし、腐食環境の下での疲労の対照となる、大気中での疲労のデータ採取を行っているが、チタン合金の鋳造体への鋳型材の影響を調べ、またチタン以外の歯科用合金についても疲労試験を行っている。鋳造したチタンは他の歯科用合金の疲労による破壊挙動の違いがあることが分かり、また、疲労が進行するにつれて応力-ひずみ曲線は次第に立ってくるとともに、ヒステリシスの幅が大きくなった。また、X線像で検出できないような鋳造欠陥は通常はあまり問題にならないが、くり返し荷重の下では破壊に大きく影響するなど興味ある知見が得られた。 これとは別に、チタンと他の歯科用合金を接触させ腐食液に漬けた場合の腐食挙動についても実験を行った。チタンは耐食性が優れているが、金銀パラジウム合金や金合金などチタンよりも貴な合金に接触すると、相手側の合金からの溶出は減少するが、チタン側からの溶出が若干増加することが判った。しかしその度合は生体に直接影響するほどではない。
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