腐食疲労は、腐食と疲労が複雑に絡み合ったものであり、それぞれについて十分検討する必要がある。 この研究では、疲労試験に先立ち、ダイナミック硬さ試験機を用いて鋳造した金属材料の変形機構について検討した。その結果これまでの歯科用合金はいずれも面心立方格子であるが、チタンは室温では稠密六方格子であり変形機構が異なることが判った。 つぎに、金属材料の腐食に関して長期間にわたるイオンの溶出挙動を検討した。また、口腔内にいて異種金属に接した場合の腐食についても試験を行った。その結果、チタンのように卑金属であるが不動態化により耐食性が保たれている金属においては、より貴な金属と接触すると単独で使用されている状態よりも溶出量が幾分増加することが判った。しかし、その増加量はわずかであり、通常の歯科での使用状態では問題はない程度であることが判った。 疲労試験を行うにあたり、まず試験片のサイズによる影響について検討した。その結果、従来の金属材料ではそれほど問題にならないが、鋳造したチタンの場合、表面による効果以上に力学的性質にかなり差を生じることが判明した。また試験片の表面状態による疲労強度への影響については、表面を研磨したものは、鋳造したままのものよりも疲労強度はかなり高いことが判った。人間の咀嚼を考えると2Hz程度が望ましいが、非常に時間がかかる。そこで大気中での疲労試験の場合、10Hz程度ならほとんど影響がないことを確かめ加速試験を行った。しかし、腐食疲労試験の場合は時間への依存性が高いことから、2Hzで試験を行った。成人の一日の咀嚼回数は2000回であると言われ、歯科用金属材料を10年間使用するためには、チタンで160MPa、コバルトクロム合金では200MPa以下で設計する必要があることが判った。
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