研究概要 |
細胞伸展装置フレキサ-セルを使用して,刺激の強さと間隔の違いによるヒト臍帯動・静脈血管内皮細胞の応答性を検討した。 まず,ヒト臍帯静脈血管内皮細胞に対して,6%,12%,24%の力でそれぞれ9日間連続刺激を与え,刺激後1,3,5,7,9日後の細胞数をコールターカウンターで測定した。どの条件においても,刺激を加えた方が,刺激を加えなかったものに比較して,細胞数が少なかった。また,ヒト臍帯動脈血管内皮細胞に対して24%の力で9日間連続して刺激を加えたところ,臍帯静脈血管内皮細胞と同様の傾向が認められた。 次に,24%の力で刺激の間隔を変化させてヒト臍帯動・静脈血管内皮細胞を刺激し,最も刺激のかかるウェル辺縁の細胞数を写真撮影により測定した。臍帯動・静脈血管内皮細胞はともに,連続刺激した場合と24時間おきに刺激した場合において,静置培養した対照よりも,細胞数が増加する傾向が認められた。しかし,6,12,24時間刺激後静置した場合においては,刺激しなかったものと細胞数がほとんど同じであった。 連続刺激した場合と刺激しなかった場合の細胞数が,コールターカウンターで測定した時と辺縁を写真撮影して測定した時とでは異なる結果が得られた。フレキサ-セルで機械的刺激を加えるとその構造上ウェル辺縁部に最も応力がかかることが知られている。例えば,24%の応力をかけてもウェル中央部は1%程度の応力しかかからない。機械的刺激の応答性をより精密に観察するために,今後辺縁部の細胞数を顕微鏡下で測定することにした。 以上の結果から,血管内皮細胞は,間欠的な刺激に対して細胞増殖が促進されることなどが示された。今後機械的刺激に対する代謝産物の変化についても検討を加えていきたい。
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