研究概要 |
これまでの研究で,脱灰エナメル質の表層に生成される物質がアパタイト結晶構造を持つことをin vitroの試料ではあるが,HREMで確認し得た。これらの研究結果から,再石灰化機構解明にあたって、その初期現象を観察することに焦点をしぼることとした。また,超薄切試料を従来から用いていたダイヤモンドナイフによる方法と平行して,アルゴンイオンエッチング法により作成することとした。これらの試料について再石灰化の初期現象をHREMで観察したところ,いずれの試料においても,結晶性のウィスカ-を生成していることを確認した。そしてこのような所見の確認は,この領域での最初のものであると考えられた。 これらのウィスカ-が,母体としている脱灰エナメル質表層に垂直な方向性を持って配列していることから,脱灰エナメル質の再石灰化機構は,エピタキシ-によるものと結論づけた(IADR,73rd Annual Meeting,1995)。一方、in situにおける研究では,脱灰エナメル質表面に吸着される唾液タンパク質を生成,分析した。すなわち,獲得被膜試料と,全唾液成分をSDS-PAGEとHPLCにより精製し,それぞれ精製したタンパク質成分のアミノ酸分析およびアミノ酸配列解析を行い,10KDa,14KDa,24KDa,および27KDa成分はそれぞれスタセリン,シスタチンHSP-12,プロテイン-A,およびプロテイン-Cと同定した。そして,これらの唾液タンパク質成分が脱灰エナメル質に吸着される様相が,フッ化物溶液,とりわけ酸性フッ素リン酸溶液の歯面処理によって変化することも明らかにし得た。
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