研究概要 |
これまでの研究で,脱灰エナメル質の表層に生成される物質がアパタイト結晶構造を持つことをin vitroの試料ではあるが,HREMで確認し得たが,これらの研究結果から,再石灰化機構解明にあたって,その初期現象を観察することに焦点をしぼることとした。また,超薄切試料を従来から用いていたダイヤモンドナイフによる方法と並行して,アルゴンイオンエッチング法により作成することとした。これらの試料について再石灰化の初期現象をHREMで観察したところ,いずれの資料においても,結晶性のウィスカ-を生成していることを確認した。これらのウィスカ-が母体としている脱灰エナメル質表層に,垂直な方向性をもって配列していることから,脱灰エナメル質の再石灰化機構はエピタキシ-によるものと結論づけた。一方,獲得被膜試料と全唾液成分をSDS-PAGEとHPLCにより精製し,それぞれ精製したタンパク質成分のアミノ酸分析およびアミノ酸配列解析を行い,10KDa,14KDa,24KDaおよび27KDa成分はそれぞれスタセリン,シスタチンHSP-12,プロテイン-A,およびプロテイン-Cと同定した。そして,これらの唾液タンパク質成分が脱灰エナメル質に吸着される様相が,フッ化物溶液,とりわけ酸性フッ素リン酸溶液の歯面処理によって変化することも明らかにし得た。 また,全唾液のアミノ酸組成に差があっても,酸処理歯面上に形成される獲得被膜のアミノ酸組成はほぼ一定であり,特定の唾液タンパク質が特異的に歯面に吸着されることが確認された。 酸処理エナメル質保護のために開発を進めているフッ素徐放性コート材については基礎的研究を終り,臨床研究を開始したが,2年間の成績を発表することができた。
|