ニワトリδ-クリスタリン遺伝子のエンハンサーのなかで、水晶体特異性を規定するDC5領域をとりあげて解析した。DC5領域は2つの活性化因子δEF2、δEF3と抑制因子δEF1によって制御されている。DC5を中心とした領域をルシフェラーゼ遺伝子につなぎ、トランスジェニックマウスマウスを作製したところ、ルシフェラーゼ遺伝子の水晶体得異的な発現が確認できた。 δEF2は幾つかの分子種からなるが、クローニングの結果Soxファミリーに属するものであることが明かになった。δEF2aはSox-2とSox-3、δEF2bはSox-1に対応すると結論された。またδEF2がδEF3と協同してはじめて転写活性化が起きることが示された。 δEF1は、分子量12万の蛋白質で、CACCTをコアとした塩基配列に結合し、それはE2-box(CACCTG)を含む。δEF1が、bHLHによる転写活性化をE2-box特異的に競合的に抑制すること、また、δEF1が、以前から検出されていたE2-boxに特異的な抑制活性を説明するものであることを示した。マウス胚のなかでδEF1は、筋節、中枢神経系、神経堤、胸腺原基などでとくに強く発現されていた。個体の中でδEF1がどの組織のどの遺伝子と活性化因子を標的としているのかを明かにするために、δEF1突然変異体マウスを作成した。それらのマウスは、胸腺でのT細胞分化に異常を示した。
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