研究分担者 |
田近 英一 東京大学, 大学院・理学系研究科, 助手 (70251410)
荻原 成騎 東京大学, 大学院・理学系研究科, 助手 (50214044)
中嶋 悟 東京大学, 大学院・理学系研究科, 助教授 (80237255)
小泉 格 北海道大学, 理学部, 教授 (20029721)
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研究概要 |
本研究の主要目的は、日本海への黄砂フラックスの時間空間変化を過去250万年間に渡って復元することにある。そのために今年度は、ODP797地点の約400試料(過去150万年間に相当)と798地点の180試料(過去30万年間に相当)について蛍光X線分析により主要化学組成を定量した。分析値を詳しく解析した結果、堆積物中のAl,Ti,K,Mg,Naは主として砕屑物に含まれ、一方、Siは砕屑物および生物源シリカに、Caは石灰質微化石(および砕屑物)に、Feは自生黄鉄鉱および砕屑物に、Mnは自生の酸化物に、Pは有機物および砕屑物に含まれていることが判った。Al,Ti,K,Mg,Naについて相互の関係を調べたところ、砕屑物の組成は、組成の異なる2種類のエンドメンバーの混合でほぼ説明できることが判明した。エンドメンバーの組成から、一方は黄砂起源の砕屑物、他方は日本列島起源の砕屑物を表すと推定される。そこで、Ti/Al比から各堆積物試料中の黄砂含有量を推定したところ、氷期に50〜70%、間氷期に20〜30%と、氷期に高い傾向がある事が判明した。このことは、氷期に黄砂フラックスが高かったかあるいは日本列島起源の砕屑物フラックスが低かった事を意味する。そのどちらであるかを明かにするため、797地点の過去20万年間の堆積物について質量堆積速度の時代変化を10の時代に区切って推定し、それにその期間の黄砂含有量の平均値をかけることにより、黄砂フラックスとその時代変化を推定した。その結果、797地点への黄砂フラックスは氷期に2〜2.5g/cm2/kyと高く、間氷期に1〜1.5g/cm2/kyと低い事が明らかになった。一方、日本列島起源の砕屑物のフラックスは、氷期に低く、間氷期に高いと言う結果が出ている。これは、どちらかと言えば予想外の結果であるが、恐らくは間氷期に日本列島日本海側の降水量が増し、河川流出量が増加した事を反映していると解釈される。
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