研究課題/領域番号 |
05405005
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
小久保 正 京都大学, 工学部, 教授 (30027049)
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研究分担者 |
中村 孝志 京都大学, 生体医療工学研究センター, 助教授 (10201675)
大槻 主税 岡山大学, 工学部, 講師 (00243048)
八尾 健 京都大学, 工学部, 助教授 (50115953)
宮田 昇 京都大学, 工学部, 講師 (10026221)
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キーワード | バイオミメティック法 / アパタイト / 無機・有機複合体 / コーティング / 核形成 / 結晶成長 / 接着強度 / 生体活性 |
研究概要 |
1.研究目的:本研究者らは先にCaOとSiO_2を主成分とするガラスを核形成剤として用いると、ヒトの体液に等しい無機イオン濃度を有する擬似体液中で、各種の合成有機高分子材料上に、骨の無機物質と同種のアパタイト微粒子の、緻密で均一な層を任意の厚さだけ形成させることができることを明らかにした。 本研究は、同生体模倣反応法により有機高分子基板上にアパタイト微粒子が生成する機構、及びアパタイトが高分子基板に接着する機構を明らかにすることにより、アパタイト微粒子の形や大きさ、配列、接着性などを制御する指針を得、その結果に基づいて、骨に類似した三次元構造物を作り、その力学的性質並びに生物学的特性を明らかにすることを目的とする。 2.研究成果:CaOとSiO_2を主成分とするガラス粒子をヒトの体液に等しい無機イオン濃度を有する擬似体液(SBF)中に沈め、その上に各種有機高分子基板を一定期間置き、次いでその基板をSBFの1.5倍のイオン濃度を有する水溶液中に一定期間置くとすべての高分子基板上に、骨類似アパタイトの緻密で均一な層が形成される。もし第1の処理を省略すると、第2の処理後にアパタイト層が全く形成されない。第1の処理の時間が短いと、第2の処理後にアパタイトがまばらにしか形成されない。これらの結果は、第1の処理はアパタイトの核形成に必須であり、アパタイト核の数は第1の処理時間が長くなるにつれて多くなることを示している。そこで、第2の処理後均一なアパタイト層を形成するのに十分な数のアパタイト核を作るのに要する第1の処理時間をアパタイトの核形成の誘導期間と定義することができる。このアパタイト核形成の誘導期間は、ポリテレフタル酸エチレン、ポリメタクリル酸メチル、ポリエーテルサルフォン、ポリアミド6、ポリエチレン、ポリテトラフルオロエチレンに対し、すべて1日であった。高分子表面におけるアパタイト生域は、ガラス粒子から溶出したカルシウムイオンが周囲の液のアパタイトの活動度積を高め、溶出したケイ酸イオンが高子表面に付着し、そこでアパタイトの核形成を誘起する結果生じると考えられる。従って、上記の結果は、ケイ酸イオンの高分子表面への付着能が高分子間で変わらないことによると考えられる。第2の処理後形成されたアパタイト層と高分子基板の接着強度は高分子の種類によって著しく異なった。ポリテトラフルオロエチレンは、ほとんど接着力を示さないのに対し、ポリテレフタル酸エチレンやポリエーテルサルフォンは約4MPaの接着力を示した。これは、これらの高分子中のエステルやスルフォニール基などの分極性の高い基がアパタイトと結合するためと考えられる。この方法で高分子基板上に形成されたアパタイト層は骨と早期に結合し、軟組織とも良い親和性を示した。
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