成人女子の皮膚温をサーモグラフィ装置を用いて全身を37部位に分けて調べたところ、皮膚温は有意に時刻変動・月経周期変動することがわかった。そこで、被験者の月経周期の位相と圧迫開始時刻とを統制し、左手上腕を幅10cmの血圧測定用加圧布で2分間・2回圧迫した。左手-掌面の皮膚温は40mmHgで圧迫すると直ちに低下し、圧迫解除後には回復するリズム的挙動を示した。一方、10mmHgで加圧した時の同測定部位における皮膚温は、1回目の圧迫開始時点から低下し始め、圧迫解除後もなお低下し、なかなか回復しないことがわかった。このように、10mmHg程度の弱い圧刺激は、ヒトが日常経験している加圧を意識しない衣服圧レベルの刺激であったため、体温調節反射が働かなかったと考えられる。 動作(おじき)に伴う浴衣圧の変化、おはしょりの着くずれ量、背側の皮膚の伸びとの関連を調べた。おはしょりの着くずれは座礼時・立礼時ともに、どの被験者であっても背側に生じた。おはしょりの着くずれ量はおじぎの回数や立ち座りの回数によって増した。おじぎに伴う背側の皮膚の伸びは主に垂直方向(脊椎骨の配列と同方向)に生じ、その伸び率は最大135%であった。また、おはしょりの着くずれ量が大きい被験者程、おじぎに伴う圧の変化率が大きく、おはしょりの着くずれ量と圧の変化率の間にはStevensのベキ法則が成り立つことが分かった。なお、着慣れが浴衣圧に及ぼす影響、振り袖圧とその官能評価、衣服圧と体表の粘弾性、体表面のレリーフの変化と衣服圧に関しては現在解析中である。
|