研究課題/領域番号 |
05451011
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
田中 英道 東北大学, 文学部, 教授 (80000397)
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研究分担者 |
松尾 大 東北大学, 文学部, 助教授 (00119364)
野家 啓一 東北大学, 文学部, 教授 (40103220)
吉田 忠 東北大学, 文学部, 教授 (60004058)
鈴木 善三 東北大学, 文学部, 教授 (70004033)
岩田 靖夫 東北大学, 文学部, 教授 (30000574)
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キーワード | 形象 form / ゲーテの形象学 / ディルタイ / ゲシュタルト心理学 / E.カッシーラー / 構造主義 / パノフスキー |
研究概要 |
形象(形態)=FORM という言葉は哲学、生物学、言語学などの諸学にわたっているが、とくに美術史を中心にすえて、その芸術学的考察を行うために、各分担者と何度か検討を行った。とくにゲーテが行った形象学的考察は、生物学上の形象を扱ったものであるが、これは生物学のみならず、19世紀末から精神科学の領域にも適用されるようになったことを検討した。その思潮は5つに分けられることがわかった。(1)ディルタイの形象学的解釈学は、世界観には諸々の類型があり、その形成の合法則性を認識しなければならないとするもので、シュプランガーの「文化形態学」やシュペングラーの「世界史の形象学」のなかでも継承されている。(2)ゲシュタルト心理学は、形象が要素に還元できないと考える「ホーリスム」と要素への還元を目指す還元論に別れて行った中で、心理学における「ホーリスム」というべきものである。この立場によれば、目に直接に与えられた形象は究極的な、それ以上還元できない事実であるとする。(3)フッサールの現象学、ゲーテの形象学やゲーテの色彩論は、彼が「根本現象」と呼ぶ本質的な現象の把握を目指すものであった。これは、フッサール以降の現象学に於て同じ試みがなされている。フッサール自身はゲーテの研究は知らなかったが、現象学派の一部はゲーテをその先駆者と見なしていた。(4)カッシーラーの「象徴形式の哲学」では、ゲーテが思惟と感性の関係を問題にしたと考え、これをカント的な「悟性」や「感性」と区別し、その新たなる統合を目指したのである。(5)「構造」主義の役割として、ゲーテの形態学があり、レヴィ・シュトロースやチョムスキーが「構造」の新しい捉え方へと導かれて行った。以上5つの潮流があるが、このE.カッシーラーの「象徴形式の哲学」がパノフスキーに影響を与え、全ての知は結局のところ現実の形象化に発するとの考えを受け継ぎ、その形象化のうち典型的なものを芸術と考える。その自由な精神的活動が形象へと変貌するとき、そこに存在の全体性として表現されるのである。
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