本研究では、視覚に障害をもつ児童生徒の静止立位時におけるタッチ・テクニックによる白杖操作を画像分析し、白杖操作スキルを横断的に比較した。被検者は、盲学校小学部に在籍する男子9名、女子6名、中学部と高等部に在籍する男子7名と女子3名、成人男女各1名とした。反射テープを被検者の正中線上の腹部と手関節背面、白杖の先端部に貼布した。静止立位でタッチテクニックを行なっている被検者を、前方5mの床面に固定したビデオカメラで撮影し、その画像をコンピュータで解析した。被検者の身長と白杖の長さの相関係数は、r=0.96(p<0.05)であった。その結果、年齢が高くなるにつれて、白杖を持つ手首の運動は小さくなること、白杖の運動が左右対称になること、白杖の周期も約1.2秒に近づくこと、白杖先端部も床から3cmの望ましい高さに近づくこと、手首の移動もも減少し、正中線に近づくことがわかった。また、年齢の増加にともなって、手首の中心と白杖の左右の運動の両端を結んで得られる三角形が、二等辺三角形に近づくことがわかった。これらの結果は、盲学校児童生徒は視覚情報を動作の制御に利用することができないが、非視覚的な感覚情報、例えば固有感覚情報や聴覚情報を用いて白杖操作スキルを発達的に獲得していることを示唆している。また、小学部低学年から白杖を導入し、その指導を始めることが可能であると考えられる。
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