今年度の研究は、立位静止時の白杖操作のトレーニング継続して行い、その効果を分析する予定であった。しかし、平成5年度に実施した実験結果を検討した結果、一定時間のトレーニングによって盲学校児童生徒は白杖スキルを十分に獲得することが出来ると判断された。そこで、今年度は、白杖操作スキルの分析を中止し、白杖による肌理と大きさの実験を5名の小学部の盲児に行った。その結果、白杖の操作によって対象の肌理や大きさはかなりの程度まで認知できること、また白杖操作を対象の性質に応じて変化させるというストラテジーを持っていることが分かった。さらに、白杖を持っている腕の角度や腕の運動によって対象の大きさを認知していることが分かった。このような盲児の白杖による対象の認知能力は、大学生が目隠しして行った結果と差異は見られなかった。この結果は、盲児の非視覚能力が早期から発達していることを示唆している。 次に、外乱にたいする全盲成人5名の直立姿勢保持能力を重心計を用いて測定した。被検者が直立している重心計を前方あるいは後方に傾斜させた場合の重心の大きさと下肢の筋電図を記録した。その結果、盲人は傾斜という外力にたいして、重心は大きく動揺し、下肢の筋活動は増加する傾向が見られた。これは、盲人が歩行中に段差や凹凸に遭遇したときに身体のバランスが不安定になることを示唆していると考えられる。この結果については、平成6年10月に台北で開かれた3rd Intemational Symposium of Asian Society for Adapted Physical Education & Exerciseにおいてポスター発表した。
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