本研究のねらいは、盲学校児童生徒の白杖歩行スキルの発達を空間知覚と身体運動のコントロールという観点から検討することであった。そこで、空間知覚の課題として、点字の読みトレーニングと触知覚のストラテジーを、空間における身体運動の制御の課題として、白杖操作のトレーニングと直立時姿勢保持のフィードバック訓練を設定した。 盲児の点字読速度は1年間にわたる点字読みのトレーニングを左右の示指と両手の3つの読み方に分けて、単位時間当たりの読字数を記録した。その結果、いずれの盲児も読速度は向上した。次に、全盲児が対象をハプティック知覚(触知覚)しているときにどのような触り方、つまりストラティジ-をとるのかを観察した。全盲児では指を左右に動かすLateral motionとよばれるストラティジ-の出現頻度が晴眼時よりも高かった。触知覚で対象を探索している時間を5つの相に分けてみると、全盲児は第1相から第5相にかけてLateral motionが増加していくのに対して、晴眼児では第1相から第3相にかけてLateral motionは減少し、第4相以降増加するという傾向が見られた。 ところで、全盲児の空間知覚能力は白杖歩行を含む身体運動の場で発揮される。そこで、盲児が自己の身体を空間で制御する能力を見るために、直立姿勢を保持しているときに前後方向の動揺を音声でフィードバックしてみた。その結果、トレーニングを重ねるにつれて、直立姿勢保持の成績は向上することがわかった。 次に、白杖歩行を日常行っていない盲児が白杖をコントロールできるかどうかをみるために、静止した状態で白杖を左右に振る訓練を実施した。これを10週間にわたって実施した結果、基本どおりに操作できるようになることがわかった。訓練中の指導によって、白杖を振る位置や高さをコントロールできるようになった。
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