研究概要 |
前脳基底部損傷例は、Damasioの有名な症例Boswellとは異なって、病巣が海馬に及んでおらず、むしろ前頭葉の内側面を含み、逆行性健忘を主とする臨床像を呈していたが、前頭葉機能障害も顕著であった。 前脳基底部損傷例で、記憶障害を呈する症例と呈さない症例とで、作話の内容の違いを検討したが、明確な差異を確認するまでには至らなかった。 膨大後部皮質損傷では、右損症例が地誌的記憶の特異的な障害を示すのに対して、左損症例は言語性を主とした一般的な記憶障害を示すことが、平成5年度までに明らかにされたが、この点がさらに新しい症例によって確認された。 視覚記憶に障害を持つ連合型相貌失認患者に,既知顔貌と未知顔貌とを刺激対として,「どちらか好きな方」を選ぶ課題と「既知感を感じる方」を選ぶ課題とを課したところ、既知顔貌を選ぶ確率が前者ではチャンスレベルより有意に高いのに対して、後者ではチャンスレベルにとどまっていることが明かとなり、嗜好判断に限って潜在的認知が見られることが示された。また顔と名前の対連合学習では、正しい対の方が誤った対より正答率た有意に高く、ここでも潜在的認知が示された。
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