一寺言問、京島、真野、平野、竹見台地区の3年間の調査研究から得られた知見は、主なところ以下の諸点である。1.大都市の旧市街地中心部ないしインナーエリアと呼ばれる地区は、都市行政の諸施策からとり残され、低成長期以後の地域活力の衰退が激しく、地域産業の衰退、人口の高齢化、建物の老巧化という共通の課題を抱えている。2.こうした地域空洞化現象の下でのまちづくりは、可能性として地域再生の一契機となりうる。3.行政が推進するまちづくりは、ハードなものづくりを中心に事業が進められるが、これを地域形成の広範な課題と関わらせてみるとき、都市計画の住環境整備以外への、たとえば地域福祉や社会教育などへの意図的な波及はみられない。4.インナーエリア再生の中で地域住民が共生していくためには、共生のための新たな生活のルール(土地も含めた生活環境の共同管理)が住民同士の間に生まれることが必要である。「公」的領域である行政と住民の私権の利害(「私」的領域)との間に距離がある中で、「共」的領域を担う中間集団の活動においては、こうしたルールの創出に向けての活動が大事になってくる。5.地域の中で、どの地域住民組織がこうした「共」的領域の勢力ある代表を占めるかは、既存の地域住民組織の認知度や勢力の問題である。6.まちづくりが住民主体のものとなるためには、対等を前提にする地域内緒団体が、地域行事ごとに実行委員会を組むような形で、緩やかな連合を組めるようなしくみに地域の構造が変わることが、一つの行程である。7.そのための一つの手法として、若い者(壮年層)のアソシエ-ショナルな団体を地域の中につくり出す方法が考えられる。
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