本研究では、90年代の前半、急速に進展したトヨタの北海道進出を巨大企業の地方分散の事例として取り上げ、一方で、進出企業の側の新会社設立の経緯と、他方で、進出を受け入れた地元北海道の側の対応の両側面からアプローチし、巨大企業の地方分散の背景、動向と現状を実証的に明らかにした。 トヨタの北海道事業の展開に、進出企業の側からアプローチした第1部では、トヨタが国内工場の地方分散を決意した背景と、新会社の設立に向けての支援体制を明らかにし、同時に、別会社(分社)として発足した新会社トヨタ自動車北海道の沿革や経営理念、親会社からの従業員移動の実態、操業の現状や課題を具体的に明らかにした。トヨタグループのユニット部品の供給拠点として発足した北海道トヨタは、国際化の中で順調な立ち上がりをみせたが、親会社からの自立が、今、問題になっている。 また、トヨタの進出を受け入れた地元北海道の側からアプローチした第2部では、まず、特に大きな盛り上がりをみせた道内企業の参入問題を取り上げ、業界団体や行政が行った「地元企業」の参入支援・育成事業の展開や参入を目指して活動した「進出企業」の動向を明らかにした。そして、道内で操業する自動車メーカーいすゞやトヨタの部品工場に対する、現状での「道内企業」の参入実態を分析し、とりわけ「地元企業」の厳しい現実を明らかにするとともに、曲がり角に来ている行政・業界団体の育成・支援事業の現状を考察した。
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