本研究の目的は、教育・職業アスピレーションの形成過程を学校文化や階層構造との関わりから明らかにするとともに、そうしたアスピレーションのあり方が社会意識にどのような影響を与えているか解明することにあった。そこで、仙台圏にある19の高校・高専で「教育と社会に対する高校生の意識」第3次調査を行い、以前に行った第1次調査の結果と比較することによって、以下の知見を得た。 1.以前の調査結果(1986年度)に比べると、高校生の教育アスピレーションにおいても、親の教育期待においても高学歴志向が強まっている。とりわけ、従来は大学進学率の低かった女子や非進学の普通校で大学進学志望(期待)が上昇し、高学歴志向が全般化したことが示された。 2.職業アスピレーションに関しては、事務職への志望が男女とも減少したが、専門職への志望は、男子で減少する一方、女子で増加していた。その背景には、女子ではこれまで男子の志望が多かった専門職への志望が増えたこと、また男子では技術者志望が減ったことがうかがえた。 3.社会意識については、以前の結果に比べると、公平感と生活満足感は向上していたが、社会に対する満足感は低下している。また、親子の社会意識の間には正の相関がみられたが、その相関の強さは、以前の調査に比べると弱くなっていた。 こうした高校生の社会意識には、出身階層(親の学歴・職業)による差異とともに、学校文化による差異もみられた。今後は、こうした社会意識の形成過程について、学校文化やアスピレーションの問題と関連づけてさらに分析を行う必要がある。
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