第1に、昨年度設置の赤外線テレビカメラによって今年度も木簡や漆紙文書、墨書土器の調査研究ができた。新潟県三島郡和島村門新遺跡から漆紙文書が、中蒲原郡横越村上郷遺跡、新潟市山木戸遺跡から木簡が、中頸城郡吉川町寺町遺跡、村上市はげ遺跡、見附市元屋敷遺跡から墨書土器が出土し、その調査に当たることができた。その成果の一端は、平成6年度調査の現地説明会の資料と説明(『新潟日報』9月8日朝刊記事等)や、9月23〜24日の木簡学会新潟研究集会資料に報告されている。すでに出土していた岩船郡神林村牧目遺跡や三島郡出雲崎町番場遺跡の木簡、西蒲原郡黒埼町緒立遺跡の墨書土器などについても調査することができた。 第2には、科研のテーマ「古代国家における北疆支配の特質」をひろく検討するために福井、石川、富山の各県の出土資料と出土遺跡の調査、また関連する文献的な資料調査のために、東大史料編纂所・国立歴史民俗博物館・京都大学文学部博物館・奈良国立文化財研究所等に出張し、基礎的な資料の収集と状況把握に努めた。 第3には、新潟県内の墨書土器の資料的整備が進み、この一部を報告書に発表することができた。そのために新潟県教育委員会文化行政課職員をはじめ県内市町村の専門職員の協力を得て、県内112市町村の調査依頼とその結果をもとに本年1月に全県的な検討会を開催することができた。 第4に、平城京二条大路から「越後国沼足郡深江」木簡が出土し、また富山市吉倉B遺跡から「城長」の墨書土器が出土したことを調査することができた。前者は『国造本紀」記載の「古志深江国造」の存在を決定的にするものとして報告した。
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