(1)印影のある古文書原本の調査と検討 本年度は厳島文書・石清水文書・園城寺文書・法隆寺文書などの古文書原本を調査する予定であったが、種々の事情から果たせなかった。このため古文書の原本調査としては、京都大学文学部博物館所蔵文書(4月28日)および「楢の朽葉」(京都国立博物館寄託、7月15日)の現況調査を行なったにとどまるが、後者によって寺外流出した東大寺文書の調査がいっそう完成度を高めた。また既調査文書の写真による再検討作業をさらにするめ、特に平安時代の国印・倉印については、その全体像を見通せる段階に至った。 (2)コンピュータ・グラフィックス処理による各印影の復原 前年度に続き、Macintosh上で動作するグラフィックソフトであるPhotoshopおよびCanvasを用いて、焼付写真の画像取り込みとレタッチを進めた。 (3)印影データベースの作成 『平安遺文』所収文書・正倉院文書・東大寺文書について、印影のある古文書のデータをパーソナルコンピュータ上で簡易データベース化した。 (4)検討会の開催 原本調査や関係史料収集に立脚して古代官印に関する検討会を開催し、諸国印からみた国名表記成立、内侍司印の特殊性、外印請印儀の特質などについて議論を行なった。
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