研究課題/領域番号 |
05451069
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研究種目 |
一般研究(B)
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配分区分 | 補助金 |
研究分野 |
西洋史
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
藤本 和貴夫 大阪大学, 言語文化部, 教授 (70029734)
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研究分担者 |
中谷 功治 大阪大学, 文学部, 助手 (30217749)
竹中 亨 大阪大学, 文学部, 助教授 (90163427)
江川 温 大阪大学, 文学部, 教授 (80127191)
川北 稔 大阪大学, 文学部, 教授 (70107118)
合阪 学 大阪大学, 文学部, 教授 (50027976)
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研究期間 (年度) |
1993 – 1995
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キーワード | 言語政策 / 政治支配 / 歴史 / ギリシア正教 / ハプスブルク帝国 / ナショナリズム / 民族語 / 多民族国家 |
研究概要 |
本研究は人類の活動の基礎であり、諸民族のアイデンティティーを示す重要な手段としての言語をさまざまな政治権力や政治集団がその政治支配と貫徹させるためにどのように扱ってきたか、という角度からヨーロッパ史を検討することによって、さまざまな政治支配体制と諸国家における社会のありかたを明らかにしようとしたものである。その成果は簡単にまとめれば以下の通りである。 1)古代中世においては、たとえばギリシア正教が布教の過程で、ラテン語ではなく諸民族語での祈祷を認めた結果、さまざまなバリアントをもつ正教の世界を創り出したとはいえ、ヨーロッパ世界を2分する大勢力となた。布教における諸民族語への対応の問題はその後のカトリックにおける宗教改革の過程でも大きな意味をもつことになった。 2)近現代史においても、民族言語の再生運動は第一次大戦後のロシア帝国やハプスブルク帝国の崩壊にともなうナショナリズムの高揚のなかでも見られる。その際、ハプスブルク帝国が諸民族の言語に一定の自律性を与えていたのに比べて、ロシア帝国では一部を除きロシア語が強制されていた。そのため言語問題が革命運動と結び付き諸民族国家の独立後は民族語の開花をもたらせた。 3)しかし、独立国家は同時に自己の少数民族や少数派となったロシア人をかかえており、今度は彼らに独立国家の民族語を強制することで新たな紛争を呼び起こすことになった。現在でもバルト3国などがロシア語を法的に締めだそうとして、ロシアとの対立を生み出している。 4)言語と政治支配の問題に対して意識的な対応がおこなわれるのは、ハプスブルク帝国においてであるが、米国、ロシア、EUなど、現在のあらゆる多民族国家が、依然として言語と政治の関係のあり方について、感情的な対立と激しい論争をかかえている。 5)多民族国家における言語政策は国際関係と関係づけて研究する必要があり、また国家権力による言語政策の成功度と国家支配の安定性の間には密接な関係がある。
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