研究課題/領域番号 |
05451070
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研究機関 | 鳴門教育大学 |
研究代表者 |
垂水 節子 鳴門教育大学, 学校教育学部, 教授 (60171906)
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研究分担者 |
野村 文男 鳴門教育大学, 学校教育学部, 教授 (70020427)
田村 一郎 鳴門教育大学, 学校教育学部, 教授 (30047906)
尾野 比左夫 鳴門教育大学, 学校教育学部, 教授 (40071534)
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キーワード | ヨーロッパ近代 / エリート文化 / 民衆文化 / リチャード3世 / フリーメーソン / ゲーテ / 鉱夫ストライキ / 子どもの権利 |
研究概要 |
まず、個別テーマについては、各々以下のような研究実績をもった。 1〕尾野は「リチャード3世の王位纂奪の特質」(鳴教大紀要1996,3月)を完成し、昨年の同王伝説との関連で王位纂奪の実態を明らかにした。2〕田村はこれまでの「フリィーメ-スンリィー」論をさらに進めて、ゲーテの有名な教養小説「ヴィルヘルム・マイスター」2部作の『徒弟時代』と『遍歴時代』にみられる「秘儀結社」理念の変化を歴史的背景との関連で捉えた。3〕垂水は昨年に引き続き1903/4年ザクセン・クリミチャウの繊維労働者ストライキを研究。繊維業に多い女性労働者の生活実態は「民衆文化」の一部であり、5カ月におよぶ大ストライキを組織した「労働者文化」のあり方、これを「言説」合戦たらしめたドイツ第二帝制の政治文化を考察。4〕野村は「こどもの権利条約」の考察を続行するなかで、難民の子どもや武力紛争下の子どもの保護といった、今日の国際的な問題にも視野を広めつつある。 本年度は本共同研究の最終年に当たるため、以上のような個別研究の相互関連ずけ、つまり共通テーマとの係わりを明瞭にするために、討論を重ねた。その成果を全員が論文として完成するには至ってないにせよ、論点が非常に明瞭になったり、理論的に深化した面も多い。たとえば、田村のゲーテと「秘儀結社」論においては、「工業化」の始動という時代背景の中で、文人ゲーテの理念が変化しゆくさまは、まさにエリート文化と民衆文化の接点を明示している。また、尾野と垂水は「伝説」や「神話化」の考察を通じて、エリート層による民衆支配と、逆に民衆による支配層への文化攻勢を問題にした。野村の研究により「子ども文化」とでも呼ぶべき、固有の領域を新たに認識した。
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