研究概要 |
本年度調査を実施した地区は,如意寺跡の中で最も西端の宝厳院を中心とした地域で,東西400m,南北200mの範囲であった。この地区の遺跡で最も特徴的と言えるのは,園城寺(三井寺)の『園城寺境内古図』の下左,即ち如意寺の全域で言えば西端の位置に描かれている『楼門の滝』である。かつて川勝政太郎博士などが如意寺後を調査された時には,この滝を手掛かりにして『古図』の伽藍と現在の地形を対比して考えようとされた。 この滝は,現在の位置でいえば,京都市の東方,『大文字』山の一つ南側の尾根にある鹿ケ谷にあって,今日でも『古図』に描かれた滝と同じ状況が見られる。更に『古図』で滝の左側,即ち北側には石段とその上に,この宝厳院の西門に当たる『月の輪門』が描かれているがこの石段も現在でも完全に残っていることが確認できた(『研究成果報告書』図版十三)。 地形測量に先立って測量業者(日開設計コンサルタント及び測器舎)に依頼して,京都大学図書館屋上で人工衛星観測(GPS)をし,京都市左京区の養生住宅屋上の測量基準点と鹿ケ谷の二点を結んで基準点杭を設置し,25cmの等高線で地形測量を実施した。この測量には,帝塚山大学で開発したコンピューター測量のGIOVIEWを利用することによって作業のスピード化と精確さが向上した。なおこの地区の測量については,夏季には草木が繁茂し,滝に流れる桜谷川の水量が多く,東方部分において測量できなかった部分があったが,冬季には落葉して見通しもよく,滝は凍結していたため広範囲に実施できた。
|