方言の共通語化の著しい現在でも、その程度は、地域、年齢、階層、言語場面、話者の個性・価値基準によって複雑な様相を呈しているが、本研究はこれらの実態とその要因の解明を試みるため、方言色の強い、また方言コンプレックスの強い東北地方を取り上げ、その中でも関東方面と接触の多い位置にある福島県相馬地方を具体的なフィールドとして調査を行ったものである。前年度の農村部の小高町と対比させるため、本年度は、この地方の中心都市である原町市の、しかも中心市街地住民に限って各年齢層の男女71名について、音韻、アクセント、文法、語彙にわたる方言の共通語化の実態及び各人の言語環境、言語意識、言語態度を調査した。 その結果、前年度の農村部と対照的な著しい共通語化現象が音韻、文法、語彙に見られ、その結果を数量的に確認することもできたが、アクセントについては、農村部なみの状態を保っていることなどの新発見も指摘できた。尚、地域や属性による実態、特色は数量的に明らかにすることができ、場面別の使い分けについてはある程度の傾向がつかめたが、それらと住民個人の性格、意識等との相関関係は、きわめて今日的テーマであって興味深い傾向の指摘ができそうな見通しを持つに至ったものの、その客観的な分析を行った成果の公表は近い将来の課題として残されている。
|