研究概要 |
本年度の実績は以下の通りである。 1.昨年度企業(株主)と逸脱行為を行う取締役・従業員の関係を分析するモデルとして選ばれたプリンシパルエイジェンシーアプローチに関する理論的問題(例えばプリンシパルエイジェンシーアプローチにおける外部性の問題)を検討した.さらに,組織体犯罪に関する実証的データをどのようにプリンシパルエイジェンシーモデルに組み込むかについて検討を加えた. 2.民事法の観点からは,第一に,代理関係や企業と取締役の信任関係の経済学的モデルを検討中である.取引法面における代理類似の関係や企業行動としての合法・違法行動の検討をした.第二に,不法行為責任の面では,企業や使用者の代位責任の経済学モデルの理論的な精緻化を図った. 3.企業責任の哲学的基礎の問題に関しては,企業の活動の場である市場の意義とその構成条件とが明確にされ,企業や個人の活動に対して,特に分配の正義と関わる一定の道徳的制約が課されていることを明らかにした.
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