本研究の最初の年度は、平成5年度であったが、カード破産を中心とする消費者破産は、わが国の社会においてますます深刻な問題として意識されるようになり、平成9年度には、破産事件の申立件数が7万件を突破し、その大部分を消費者破産が占めていると報告される。 本研究の内容は、実態調査と比較法研究を二つの柱としたものであったが、実態調査においては、カード破産の原因にも様々なものがあり、また、その処理手続である破産免責の実務においても、免責不許可事由の運用、免責の条件としての一部弁済、あるいは免責決定の内容としての債務一部免責など、多様な取扱いがなされていることを解明した(青山善充「免責前の一部弁済と一部免責について」(月刊消費者信用94年2月号)参照)。 第二に、比較法研究として、免責制度について長い歴史をもつアメリカ破産法と、最近の改正において免責制度を導入したドイツ新倒産法を研究の対象とし、特にドイツ新倒産法においては、免責の付与か否定かという二者択一ではなく、債務の一部弁済を前提として免責を付与するという、債権者の利益と債務者の利益の調和を図る方向での制度設計がなされており、わが国における今後の立法論にとって有益な示唆がえられた。ドイツ新倒産法の研究は、大学院の演習として行い、その成果は報告書の一部として添付されているが、近い将来においてさらに検討を加えたものを公表することを予定している。15EA04:現在わが国においては、カード破磋を含む倒産法改正作業が進行中であるが、報告書中に添付されているとおり、私は各種の研究会等に参加し、実態調査および比較法研究を踏えた本研究の成果を開陳し、それについて学者、実務家との意見交換を行ったところてある。この意味で、本研究の成果は、21世紀のわが国における消費者倒産法制再構成の基磁資料としての意義をもつものと信じている。
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