本研究は、公務員のキャリア・デベロップメントの実態とその枠組となっている人事行政システムの有効性について実証的に研究することを目的とした。その研究の基礎となったのは、旧内務省系省庁(警察庁、自治省、厚生省、労働省および建設省)に昭和23年から平成4年までの間に入省庁したいわゆる「キャリア組」を対象として、昭和47年から平成4年までの人事異動先のポストを入力し、ポストの属性を付したデータベースである。本年度は、まずこのデータベースをいくつかの類型に加工した。 その第1は、年次を基準とした新たなデータベースの作成である。これは、例えば、建設省であれば、昭和23年から平成4年までの間に入省庁したいわゆる「キャリア組」667名につき、各年次にどのようなポストに配属されたかを明らかにするためのものである。自動的に配属先の「局」および「課」を切り出すことができるため、年次ごとの異動先の「局」および「課」等の変動がグラフによって一目瞭然で表示される。また、大まかなキャリア・デベロップメントのパターンも明らかにすることができた。 第2は、異動先の類型--本省庁、他省庁、地方公共団体等--を基準としたデータベースの作成である。このデータベースを使うことによって、例えば、建設省が職員の出向先として多い地方公共団体とそのポストを一覧することができた。これまでマスコミ等が単年度について国の本省庁から地方公共団体への出向人事を調査した例はあった、20年間に及ぶ時系列的な変動をあきらかにしたのは、本研究がおそらく最初であろう。また、他省庁への出向人事の実態も一覧できるようになった。これによって、例えば、国土庁における建設省と自治省の“領土"の分布が明らかになった。さらに、いわゆる天下りの実態もこのデータベースを使うことで一覧することが可能となった。
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