本年度の研究では、次の点を成果として報告できる。まず第1は、キャリア形成の実態に即した把握が可能となったことである。具体的なキャリア・パス(=職歴)はおそらく公務員の数と同じだけ存在する。その数多くのキャリア・パスをこのデータベースの個人票を用いることで、容易に一覧することができる。第2は、キャリア形成の具体的な契機となる人事異動について、その異動の「理由」を解明する契機が獲得できたということである。第3は、キャリア・パスの類型情報である。本データベースは、職名を、本省庁、他省庁、自治体、民間等々に類型化し、その類型情報を各データに付している。この類型を用いることによって、職歴のマクロな変動を把握することが可能となった。第4は、年次情報である。事務次官を頂点とする幹部職員へのキャリア・パスがどの程度定型化されているのかを各省庁ごとに把握できたことである。第5は、局および課レベルでの異動の状況である。ある年次の勤務先から自動的に局および課の名称を切り出す項目を設けることによって、人事面での局および課の相対的関係を把握することができた。第6は、省庁間の交流人事に関する情報である。近年、霞が関でも交流人事が奨励されるようになったが、その実態は時系列的にはどうなっているか、あるいは、国土庁や環境庁といった「寄り合い世帯」の省庁に、各省庁はどのようなポストを確保しているのか、ということが明らかになった。第7は、政府間人事関係とでも呼びうる情報である。国の省庁から地方公共団体へ、とりわけ都道府県や政令指定都市の幹部ポストへ、職員が出向するのは、広く知られた慣行であるが、具体的にどの地方公共団体のどのポストへ何年次の職員が派遣されているのかを、しかも、時系列に沿って知る資料は、筆者の管見する限り、なかった。このデータベースを用いれば、各省庁ごとに、出向人事の詳細な実態を把握することが可能となった。最後に、第8は、いわゆる「天下り」に関する情報である。『内政関係者名簿』は退官後のポストも記載しているため、公務員としての職を退いた人々が、次の人生でどのような職業に就いているのかを把握することができる。このうち、いわゆる「天下り」ではないかと推測できるポストも存在する。本データベースは、各省庁が資源として有するそうしたポストを一覧することを容易にした。
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