平成5年度〜平成7年度にわたる本研究は、バブル経済の崩壊とその後の景気低迷、急激な円高の進行、海外投資の急増と国内産業の「空洞化」、最近の円安と国内景気の回復基調といったいくつもの経済的環境条件の急変を刻印されたものとなった。 その中で、機械系下請中小企業は需要の急激な低下とその後の回復といった目まぐるしい変化に晒されてきた。そのために、本研究の課題である「自立的成長」といった構造的問題が見えにくくなったことは確かである。 しかし、日本経済の構造変化の下で機械系中小企業は、一方は自ら「自立化」の道を選択し、他方では発注政策の変化によってやむを得ず「自立化」の道を選ばされる、というふたつの選択に直面していた。そのどちらを選ぶのかは、機械系中小企業が保有する技術レベルにかかっていたといえよう。とりわけ、この技術は開発・設計にかかわるデジタル情報によるものであり、そのことが事例として金型製造業を選択した理由であもある。 本研究では、金型製造業を事例に取り上げ、ことに企業間関係がデザイン・インからコンカレント・エンジニアリングへとシフトする中で、発注側大企業と受注側中小企業関係が変化する要因を「開発」の手法に求めた。そこから得られた知見は、機械系中小企業の「自立的成長」にとって技術レベルが、中でもデジタル技術での向上が不可欠だということである。そのことによって、機械系中小企業は発注側大企業のネットワークに参入し、高い技術レベルと独自のノウハウで持って対等な取引関係を築くことが可能となるの。
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