平成5年度は、本研究の基礎となる金融市場、銀行行動分析のためのデータベース作成が中心的課題であった。他の研究者も利用可能なようにするための利用マニュアルの作成も行った。この種の作業においては、データの不断の維持改善の努力が必要であるが、これが非常に根気と時間を必要とすると共に、研究の進展に伴い、必要とするデータベースの範囲と量が益々増加するために、そのために必要なコンピュータのメモリー能力は当初の予想をはるかに上回るものとなった。しかしこれらのデータに基づき、金融市場変化の実態が正確に把握できるようになり、実証分析の基礎が出来たことは大きな収穫であった。既に、バブルの発生崩壊に関する多くの事実が明らかになり、これらを説明できるモデルの開発にとりかかっているし、金融構造の大きな変化の中で、これまでの金融政策の考え方を大きく変化させる必要性が明らかになりつつある。 平成5年度の研究計画は予定通り実行し、基礎となるデータベースや利用マニュアルの作成が行われた。それと並んで、金融市場における新たな進展、不良債権問題の深刻化や、金融システムの安定性、信用秩序維持のための危機管理手段等、早急に分析を要する大きな課題が生じていることを考慮して、分析の対象を単に狭義の金融政策に限らず、より広く金融制度のあり方をも視野に入れたものとして検討できるよう研究の方向、分析のモデルを新たに検討中である。 また既に、それらのデータベースを利用した研究が数編の論文にまとめられており順次発表する予定である。
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