研究概要 |
1.大規模稲作複合経営の自己組織性的機能的連結組織:(1)特徴 1)当該組織は市場原理の中で経済効率性をシャープに追求しながらも、組織の持続性に使命感を帯び、その重大な責任性コストとして高所得機会を有するものの集まりである。2)当該組織はレベル1(個別複合経営組織レベル)における範囲の経済性とレベル2(自己組織性的機能的連結組織レベル)における連結の経済性の両者が存在し得る組織であり、両経済性をエクスプロイト可能な性格を有する組織である。3)当該組織の調整原理としては「自=他愛」調整原理、すなわち、「自=他」である「組織」忠誠とその豊かな代償を動機とした協力調整原理が有力である。4)当該組織はその内部に構成員間の適正な競争機会を有しており、そこでの創造的な競争行動によって、組織非効率の発生が抑制されている。(2)実現化 1)当該組織は自己組織性的展開を前提にしているため、その発足に当たっては、本来的に、第三者コーディネーターを必要としない。しかし、大きく自己組織性的環境から逸脱することなく、便法としてコーディネーターを介在させ、必要な行動を促すことは、当該組織の実現化を促進する補助的方法として許容される。2)自己組織性能の点から、コーディネーターに求められる基本的機能は、権力的機能による選別や候補者の個別的後押しではなく、横から「揺さぶり」をかけること(“けしかけ")による組織形成の媒介機能(「シェ-ク」型機能)である。3)現代の多重組織風土を前提にした場合、そのシェ-ク主体は間接的組織環境に位置を占めている関連研究集団に求められる2.事前的データの創出と潜在的経済成果の把握:(1)個別経営レベルでは達成が難しい潜在的経済成果の多くは、(1)利潤機会(需要側の情報),(2)技術・資産(有形及び無形資産),(3)制度(各種補助事業)の利用可能性に規定されており、これらを「紐帯」とした「連結の経済」の具体化によってその実現が可能である。(2)事前的データの多くは、こうした要因の利用可能性に関する農家の期待ないし予見を反映したものであり、その現実化如何が事後的データとの違いを生じさせている。(3)事前データの創出にあたっては過去の経済成果に対する経営主ないし組織リーダーの評価ならびに将来の経済成果に対する彼らの期待形成の仕方について現実妥当性の高い想定を行うことが必要であり、そのためには彼らの情報処理特性における主たる共通点を見いだすことが求められる(4)「連結の経済」にその経済的根拠を持つ当該組織の維持・発展を大きく左右するのは、「退出のリスク」であり、成員間での有効なシェアリングシステムの構築と成員の一時的な退出によって陳腐化しない「頑健な紐帯」の確立が重要な課題である。
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