わが国では後期高齢者が急増する時期に入り、高齢者の寝たきり化率は、先進諸外国に較べて非常に高く、その主な理由は生活の仕方や生活条件にあると考えられている。寝たきり化は高齢者のみでなく、家族のQOLに多大な影響を与えるので予防の重要性が高い。厚生省では高齢者保健福祉推進十カ年戦略として平成2年度から平成11年度までに実現することを掲げている課題の一つに「寝たきりゼロ作戦」がある。 本研究では、このような社会状況を踏まえて健康レベル別に対象の比較および地域別ケアシステムの比較に基づき、寝たきり化予防と重度化予防のために必要なケアシステムとして確立すべき条件および改善条件・具体策について提言することを目的とし、研究成果では以下のことが示唆された。在宅者でALDが低下しやすく寝たきり化しやすい条件は、疾病では骨折・脳卒中・難病・高度痴呆症、生活面では失禁と転倒の発生および日課がない・生活リズムがない・介護者との人間関係と介護力・住宅環境が悪いなどであり、これらを予防することが重要である。また、ケアシステムとしてはこれらの対象者の早期把握(特に退院時)による訪問ケア・デイケア・リハビリテーションの早期開始が効果を上げやすいことが明らかになった。 在宅ケア高齢者について寝たきり化、重度化予防をめざして健康レベル群別の比較研究や地域比較研究をしているものは、アメリカ合衆国においてその一部がなされている程度である。わが国および諸外国においてもほとんどみられない。上記の結果から得られた成果は当該地域のみの成果ではなく、他の地域でその分析法、ケア技術、健康政策上の施策化についても応用可能なものであると考えられる。
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