本研究で取り上げた体育・スポーツ活動における事故防止と安全管理に関する問題は、生涯学習時代を背景として幅広くかつ積極的に展開されるようになったと共に、さらには技術的にもまた内容物にもますます高度化している各種の体育・スポーツ活動において、死亡事故をはじめとする重篤な事態の発生を防止し、健全かつ円滑な体育・スポーツ活動の実践を進めるために必要な事柄について整理することを目的としてスタートした。 事故の実態と分析については、体育・スポーツ活動を大きく学校体育場面と社会体育場面とに分け、国内におけるそれぞれの事故事例について実態面の把握を行うと共に、中でも訴訟にまで発展した事例については判例としてとらえ、主として法制面からの分析と検討を行った。 これらについて一部欧米の事例も参考にしつつ検討の結果、体育・スポーツ活動の指導に際しては、特に次の三点について今後の我が国においても認識を高めることが必要であると言える。 1)個々のスポーツごとの特性に応じた事故予防策を充分に整える。 2)たとえ事故が発生したとしても、訴訟を回避するために必要となる背景について事前に整えておく。 3)訴訟の可能性があったとしても、極力和解で解決するよう努力する。一方、近年特に普及と興隆の著しい野外活動においては、事故の種類が多様化してきていると共に、中でも未組織の個人レベルで活動している初心者に事故の発生が目立っていることが特徴的であった。 今後、体育・スポーツ場面における指導や管理の定義と範囲を明確にし、指導者としての性格付けや専門性の位置付けを確立し、将来的な生涯学習社会を支える人材としての立場から、その活躍場面と責任態勢を明確にする事が強く望まれる。
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