打球の初期条件からその後の運動を予測する実験:実験に先立ち200Hz/sで撮影したビデオ映像から、アナライザーによりインパクト直後の打球の回転数を同定するために、8分割する線を施したボールを用いて2種の方法を試みた。(1)線の交点をアナライザーのディスプレー上で読み取る。(2)線のいずれかが映像上で直線になるときに着目し、その角度と時間的間隔から回転数と回転軸の方向を導出する。しかし、(1)では点の読みとりに際しかなりの誤差が生じ、また(2)ではボールの回転数が100/sに近づいたり回転軸自体が動いている場合は有効ではない。そこで、撮影手段を解像度の良いフィルム撮影に代え、500コマ/sで撮影する実験を行い、現在アナライザー上で数値化中である。このデータにより、打球の軌道を推定する運動方程式の系数を定める予定である。 打撃時のバットの軌跡の形態的特徴を比較するための実験:新型ピッチングマシンからの同様パターンの投球を、(1)長打力に優れた打者(2)打率の良い打者(3)拙劣な打者に打たせビデオ撮影し、バットの軌跡をアナライザーで書かせ比較した。その結果、インパクトの時点でグリップ位置の運動方向が、(1)と(2)では投手方向が静止しているのにのに、(3)では逆向きになっている。また、バットの回転運動の支点が、(1)(2)(3)の順でグリップからバットの先端に近くなっているように見える。それは、バットを直線としてその運動を同一紙面に書かせると、(1)(2)(3)の順で直線同士が交差するものが多くなるということである。このような特徴が、それぞれどのような身体の使い方で生じてくるのかを解明することが、次の実験の課題である。1の実験でビデオ撮影も行っており、身体各部の運動の特徴について解析中である。さらに来年度、そのような運動が起こるためには、どのような工夫があるのか実験的に解明する予定である。
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