今回の報告書では、番組制作者、子ども、学校教育という3つの視点から、テレビ番組が理解できる原因を探った。 まず、番組制作者であるが、わかりやすく作るという視点から、時制に注目して分析した。その結果、ビジュアルエフェクトとして時制表現は的確につけられており、子どものテレビ理解を助ける役割を果たしていると推測された。映像作りがフィーリングの世界ではなく、努力と論理の世界であることを示したといえる。また、映像の分析には文法という考え方が有効であることも示せたといえる。 つぎに子どもという点であるが、子どもはテレビを見る上で基本的なことを不思議に思いながら、画面を見ている。回想法ではあるが、子ども時代に音声と映像を一致させる過程で生じる試行錯誤のようすを分析できた。そして、テレビを見るためには画面に映らないテレビの裏側、つまり放送局やナレーターといった知識が欠かせないことを明らかにできたといえる。 学校教育という面では、文字と時間の教育が子どものテレビ理解を促進させることを事例的に示した。きわめて初歩的な教育でさえ、テレビを理解するために有効なのであり、テレビを見る上で学校教育が果たしている役割は大きいといえる。特に、多メディア・多チャンネル化は個別視聴化を促すといわれている。学校は、子どもが集団でテレビを見ることができる場としてますます重要になってゆくと考えられる。
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