本研究の目的は日本の代表的古典である「源氏物語」のハイパーテキストを使いやすいパーソナル・コンピュータで開発し、それを教材として利用した場合の学習効果への影響を分析することにある。平成5年度は以下の作業を行なった。 1.使用機器の導入と環境整備を行なった。それに伴い既に文字データとして機械可読になっている古典日本語版及びA.サイデンスティッカー訳の英語版「源氏物語」テキスト・データベースを変換し新しいマシンにインストールした。 2.出来上がったハイパーテキストを国際的に通用させるため、SGMLやTEIといった汎用マークアップについて調査を行なった。実験的に第1章のヘッダーと内容のタッギングを行い、その成果を国文学研究資料館のシポジウム「国文学とコンピュータ」で発表した。 3.「源氏物語」の現代語訳テキストのコンピュータ入力の許可を得るために出版社と交渉を行なった。 4.最終的に研究利用への理解を得ることが出来たので、"文字データの入力作業を開始した。(研究補助を依頼した) 5.一部入力された現代語訳をデータベース化し、既に作成された古典語と英訳のテキストと連動させるようなハイパーテキストシステムの開発を行った。(専門的知識の提供を受けた) パーソナル・コンピュータ市場は、新しいOSであるWindowsの台頭に伴う端境期にあり機種選定に苦慮した。又マルチ・メディアへの関心が高まったこともあり、著作権交渉に多大な時間と労力を必要とした。今後のデータベース開発は欧米のように個人に変わって学会等が代行する体制が急務であると感じた。
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