研究概要 |
仮のDTDを用意して,現存する書簡の構造を入力し,SGMLパ-サでチェックしながら,最終的な文書構造を確定していく,という手法は,文献学に新しい道具を提供する. 1.[Encodingの基本問題]文書を機械可読する前に,機械可読に適したその文書の構造を書き表すのは難しい.AT版では,デカルト以外の人の文章,彼による引用・強調・数式記述の一部,がイタリックである.これ以外にないかどうか,をイタリックがマークされている機械可読テキストなしで,検証することは難しい. 機械可読テキストの入力要項を作成するときは,したがってある種の循環は避けられない.作業は仮の対応付けを用意して始まり,入力要項は,入力が終わったあとに完成する. 2.[DB Modelingの基本問題]データベース設計にあたって,現実を描写するとき,応々にして「そういうことはないことにする」.支店の統廃合や名称変更,上部組織に対する所属変更,などは起こらない,と考えてモデルを構成する.現実は常にモデルよりも複雑である. 現存する証拠をもとに,往復書簡集を構成する,という目的のためには,実際にあるものの描写に徹する必要がある.来たるべき新全集の出力形式をどう統一するかという問題は,今は考慮すべきことではない. [編集支援の道具としてのSGMLパ-サ]DTDは,文書構造を記述する言語体系であると考えることができる.この場合,実体としての機械可読テキストが完全に入力されている必要はない.実体のない外部ファイルへの参照として記述されていても,問題は生じない.DTDの変更をアド・ホックにおこなっても,SGMLパ-サによって後でチェックすることが可能である.
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