東京大学理学部天文学教育研究センター木曽観測所は口径105cmのシュミット望遠鏡の近赤外カメラと組み合わせて近赤外イメージ分光が可能なグリズム分光システムを設計・製作した。 一般にグリズムは透過型グレーティングに疑似コマ収差を除去するために逆分散をかけるプリズムを組み合わせたものである(2枚構成)。しかしここでは少しでも光のロスを防ぐためプリズムの片面にグレーティングを刻む“単一グリズム"方式を採用した。今回製作したグリズムは近赤外カメラ一個を使用することを想定し、サイズは5cm×5cmとした。また、分散は1000Amm^<-1>とした。 本年度内に試験観測を行う予定であったが、木曽観測所の近赤外カメラの開発が遅れて完成していないため、試験観測は次年度以降に行う。本年度は既に申請者が東京大学時代に製作した可視光域用のグリズムの性能試験及びデータ解析を行い、次年度の近赤外グリズムのテスト観測の準備を行った。 イメージング・グリズム分光では本来的な目的である1次スペクトルの他に0次像及びそのほかの高次のスペクトル像が同時に写る。今回開発したグリズムでは50%以上の光が1次スペクトルにきているが、その他の次数のイメージによるcontaminationの除去はやはり重要である。0次像及び1次スペクトルから他の次数のスペクトルをsimulateして除去する方法を開発した。近赤外分光データ解析に特有な問題についても考察を深めた。
|