グリズムは透過格子(グレーティング)に疑似コマ収差補正用のプリズムを付けた分散系である。グリズムは反射グレーティングを用いる場合よりシンプルな分光システムが製作できることもあり、現在多くの天文台の分光器で使われている標準的な分散系である。本研究では東京大学理学部天文学教育研究センター木曽観測所で開発されている近赤外撮像カメラ用に近赤外グリズムを開発・製作し、輝線天体の近赤外分光システムを構築した。 本研究では近赤外域(1-2μm)のグリズム分光システムを開発した。グリズムによる分光観測は通常のスリット分光システムとは違って基本的にイメージ分光である。従って視野内の天体の同時分光ができるという点で多数の天体の効率的な分光が可能である。そのため輝線天体などの特徴的な天体のサーベイ観測に最適な分光システムである。光学域でのグリズムを用いたサーベイシステムは既にいくつかの天文台に存在しているが、近赤外域の観測が出来るシステムはなかった。その意味で本研究で開発されたシステムは極めて重要な意味を持つといえる。
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