本研究の目的は、シュミット望遠鏡の広い視野を活用して、銀河系外縁部の恒星探査観測を行い、その構造と運動を調べることである。探査のために用いるべき恒星としては赤色巨星が採用された。 赤色巨星には普通のM型巨星と、炭素の組成比が大きい炭素星との二種類がある。銀河外縁部においては、炭素星の比率が高くなる事が予想されるので、中帯域フィルター[79]と[81]を広帯域V、Iフィルターに加え、計4バンドで撮像観測を行った。銀河系反中心方向4領域約20分四方の観測結果を解析した結果約4つの暗い炭素星候補を発見した。この結果は、これまで木曽観測所において行われた写真乾板による炭素星サーベイの結果と比べ、明らかに高く、CCDによる深い探査が有望である事を示すものである。 又、この方向の色等級図には、二本の系列が認められる。この系列の内、上の方はペルセウス腕に対応し、他の一本はその外側に広がる銀河系外層に対応すると考えられる。2本目の系列の広がりがそれ程広くない事から外縁部においては、主系列星の密度分布がかなり急に低下している事が予想される。一方、非常に明るい赤外赤色巨星は、IRASカタログに登録されているので、これらの星を個々に観測する事が可能である。これらの星の分布を調べる為に木曽観測所において、変光観測を行った。又、野辺山45m電波望遠鏡によるSiOメ-ザ観測を行った。以前、我々が行った銀河系バルジの観測結果と比べ著しい特徴は、メーザーの検出率が低い事である。この原因としては炭素星の割合が高い事が考えられ、これはCCD観測での炭素星検出率の高さと合致する。このように今回の観測の結果、ペルセウスアームの外側に広がる銀河系外縁部が観測可能であり、そこに存在する炭素星及び赤外天体の変光、従ってその空間分布を知るという成果を挙げる事ができた。
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