研究概要 |
今年度は、2段の円錐鏡面基板の製作、この基板の形状および表面粗さの光学的評価、アクリル・コーティングによるX線鏡面としての平滑面の製作、反射面金属としての金の蒸着を行なった。基板はアルミを用い、直径150mm、長さ100mm、厚さは0.3mmで製作した。ワークの支持/分離のために約0.2mmの水溶性接着材層を用いた。光学評価は可視平行光で基板全体の形状評価を行ない2段でHPD1.7分角相当の精度を持っていることがわかった。表面粗さはWYKOを用いて評価し、0.25mm以下のスケールにおいては、切削痕に直角の方向での粗さが5nm程度であり、つぎのステップのアクリル・コーティングで1nm以下にできることがわかった。しかしC-K,Al-K,Cu-KのX線による評価で0.25mm以上のスケールでの表面粗さはまだ不十分なレベルであり、さらに基板加工に改良の必要のあることがわかった。このため、2回目の基板加工を行ない、今後鏡面製作と、光学、X線評価を行なう予定である。 円錐内面の金の蒸着についてはタングステンワイヤに金の細線を巻付け通電加熱させる装置を製作した。。アクリル・コーティング面を熱で破壊しないような、蒸着条件を見つけることができた。鏡面の支持・微調機構の製作については、基本設計を行なった。X線評価装置の整備については、X線の細いビームに対して望遠鏡を走査する精密駆動台と、これに連動してX線データを取得するパソコンを用いたシステムを整備した。円錐鏡面基板の旋盤切削による製作については、水溶性接着材層の利用は精度達成のためには有効であるが、分離時間が極端に長いため製作の効率性という点で問題があり、今後さらに改善が必要である。基板形状評価のHPD1.7分角の結果は目標の1分角には及ばないものの、従来の性能(HPD3分角)を改善する可能性は十分にあることが示された点で重要である。
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