研究概要 |
膨張宇宙の初期における構造形成のプロセスを観測的に検証する手段として,非常な高感度化を可能にする赤外線分光観測の方法を確立し,遠方のごく若い銀河・クェーサーなどの観測的研究を進めた。 本年度は,新しいタイプの「OH夜光除去スペクトログラフ」と呼ぶ装置の開発を完成させ,それを用いた実際の観測を実施し,幾つかの興味深い結果を得た。例えば,赤方偏移(Z)の値が2以上のいわゆるhigh-Z領域の天体の観測としては,1)爆発的星形成期の直後の初期進化を経つつある銀河(ポストスターバースター)や,2)これまで赤方偏移の値が不明だった非常に赤化を受けた重力レンズ銀河,3)強い吸収を受けたクェーサー等,のスペクトルを得られたことによって,銀河形成後の年令や赤方偏移自体の根拠のある推定を行うことができた。これらの観測結果は,銀河形成および初期進化過程の研究を発展させる重要なステップと考えている。
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