本年度は主に楕円銀河に焦点をあて研究を行った。小規模銀河団の高温プラズマには重金属が含まれている事が知られており、これは楕円銀河が進化の過程で放出した物であると考えられている。一方アインシュタイン衛星により、楕円銀河に温度が1000万度のプラズマが存在する事がわかった。この高温プラズマこそ、楕円銀河が小規模銀河団にガスを放出した名残であると考えられたが、検出器の性能上その詳しいスペクトルが得る事が出来ないため、詳しい温度、重金属量を決定する事は出来なかった。そこで我々は感度とエネルギー分解能の高い「あすか」で楕円銀河を数多く観測し、楕円銀河の進化を調べると共に小規模銀河団との関係を調べる事にした。その結果1)楕円銀河のスペクトルは温度〜800万度のプラズマ成分と、ハード成分からなる2)ハード成分はLMXBが支配的である3)プラズマ成分が1温度とした場合、重元素組成比は太陽の半分でしかない。一方、プラズマ成分は他御度の可能性もあり、この場合重元素組成比は詳しく決定出来ない4)プラズマ成分のX線光度はその温度と正の相関がある、ということがわかった。また、巨大楕円銀河が放出した重元素がどのように空間的に分布しているか明らかにするために、乙女座銀河団の中心に位置するM87の観測も行った。その結果、1)M87の高温プラズマは〜2500万度の高温成分とと〜1200万度の低温成分からなっている。前者は乙女座銀河団ガスに、低温成分はM87に付随する成分と考えるのが自然であろう2)鉄は明らかに中心集中としているが、他の酸素、珪素、硫黄は中心集中の証拠は見られない3)酸素と鉄の比が太陽組成より低い、ということがわかった。
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