研究概要 |
我々が本研究で製作した測定器は、不安定核の励起状態を知るために重要な、比較的低エネルギー(数100keV〜数MeV)の中性子検出器である。試験の結果、この検出器は設計当初の性能を有することが確認できた。そこで、この検出器を用いて、^<15,17>Bの崩壊にともなう^<15,17>Cの励起状態からの遅発中性子測定を理化学研究所で行った。実験では、初めての試みとしてこれらの励起状態のスピン・パリティーをβ崩壊のAsymmetry factorから求める方法を見い出し、今まで測られていなかった^<15,17>Cの励起状態のスピン・パリティーを決定できたとともに、偏極核と遅発中性子測定を結び付けたこの方法の有効性が示された。現在、この方法による新たな中性子過剰核に対する実験を計画中である。また、検出器の性能を含めた今回の実験の結果については、論文執筆を予定している。 遅発中性子観測による核分光実験として、このほかに、β崩壊における超許容転移の研究を未知核種である^<14>Beについて行った。この実験では、当初予想していた、高励起状態への転移を観測することはできなかったが低励起状態への強い転移を見い出すことができた。この状態については、従来の安定核近傍で成り立つ核構造に対する描像からは理解しにくい点があり、再確認のための実験を来年度の7月ころに予定している。前年度行われたこの実験の結果の一部は、既に幾つかの雑誌に報告している。 他方、陽子過剰核側で行ってきた我々の研究成果については、幾つかの国際シンポジウムで発表し、現在論文の投稿準備中である。また、中性子測定と組み合わせる予定で作製してきた荷電粒子検出用の分割型検出器については、既に前年度幾つかの雑誌に報告している。
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