平成7年度は本研究の最終年度にあたり、これまでの成果を踏まえ、次の三つを柱として研究を進めた。 1.ドリフトレスSPCをフルに稼働させ、本研究で作られた波形デジタイザーシステムを用いて、X線やバックグラウンドのデータをとりその特性を総合的に解析し、低バックグラウンドへの最善の方策を探る。 (主に都立大学で担当) 2.位置検出型フォトチューブをたち上げ、その特性を試験しガスセルと組み合わせる。(都立大学で担当) 3.ドリフトレスSPCのガスセルを新たに製作し、ガスセルのパラメータによるバックグラウンド特性の変化を調べる。(東京大学、都立大学で担当) 波形を見ることでガスセル中での電子の振舞いの理解が大きく進んだ。プリアンプの出力波形を微分すると電子群の刻々の発光の様子や、発光開始・終了がどの程度の時間内におきているかを直接観測することができる。この結果、電場が強い状態でも電子の拡散が理論の予想より数倍大きいらしいことが分かった。こうした波形情報を利用し、エネルギーに応じてX線として許されるガスセルの深さを制限することにより、2keVでのバックグラウンドを1/10に減らすことができた。またより高いエネルギーでも波形を用いることで大幅にバックグラウンドを減らせることが実証できた。これと平衡して位置検出型フォトチューブの試験が進み、新たに作られた薄型のガスセルと組み合わせるところまで来ている。低バックグラウンドで、しかも位置分解能の良いSPCが開発できたと考えている。 年度の最後に成果報告書を作成する。
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