研究概要 |
本研究では、低温度強磁場下の2次元電子系の物性の中で、量子ホール効果のブレークダウンと低電子濃度基底状態の研究を行なった。 1.量子ホール効果のブレークダウン:電子濃度と電子移動度が異なる5種類のGsAs/AlGsAsヘテロ接合ウエハから電流電極間距離約3mm,電流電極幅0.4mmのホールバ-の中央測定部幅を3から120μmの範囲で変えた試料を製作し、量子ホール効果のブレークダウン特性を0.5Kの低温度と23Tまでの磁場で測定し、ブレークダウン電流が試料幅比例することを確かめた。これは、ホール抵抗の量子化が端状態によるものでないことを示す。量子数が2から8の偶数プラトーで測定したブレークダウン臨界ホール電場は磁場の3/2乗に比例し、ブレークダウンがランダウ準位間のツェナ-遷移によることを示した。移動度に対する依存性はない。この理解は今後の課題である。 2.低電子濃度基底状態:GsAs/AlGsAsヘテロ接合2次元電子系の電子移動度が35および20m^2/Vsの低電子濃度試料で、0.3Kまでの低温度で23T(ランダウ準位の充填率1/9)までの磁場で対角抵抗とホール抵抗を測定し、活性化エネルギーのランダウ準位充填率依存性を求めた。他の研究者による高移動度試料の結果も含めて、電子間クローン相互作用エネルギーで活性化エネルギーを規格化し、ランダウ準位充填率との関係における電子移動度依存性を見いだし、低電子濃度領域の絶縁体相における電子間クローン相互作用の働きを調べた。また、最大移動度が2.5m^2/Vsおよび0,8m^2/VsのS1-MOSFETの対角抵抗とホール抵抗を、50mKまでの低温度と15.6Tまでの磁場中で測定し、金属-絶縁体転移を調べた。転移が現われる電子濃度は異なるが、金属-絶縁体転移の全体の特性は両試料の結果は一致した。この結果は、これらの系の絶縁体相はウイグナ-結晶ではなく、アンダーソン局在相であることを示す。
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