研究概要 |
1.ゼオライトLTAにカリウムを吸蔵させてその磁気的・光学的性質を調べたところ以下の点が明らかになった. (1)LTAの内径約11Aの細孔にカリウムのs電子を含むクラスターが作成され,その量子準位間の光遷移が観測された.更に,カリウム吸蔵量を増大させるとs電子が量子準位を下から順に占有して行く状況に対応するスペクトルの変化が観測された.また,s電子の集団運動である表面プラズモン準位が観測された. (2)磁気的性質からは,カリウム吸蔵量に依存して磁化率が大きく変化し,中間の吸蔵量において強磁性が観測されることがわかった.これらの結果をクラスター間を遍歴するs電子の強磁性というモデルで解析した. 2.ゼオライトLTA中にナトリウムとルビジウムを吸蔵させて,その光学的・磁気的性質を調べたところ以下のことが明らかになった. (1)ナトリウムとルビジウムにおいてもクラスター内のs電子の量子準位間の遷移が観測された.しかし,クラスター内へのs電子の閉じ込めの強さの違いに起因するスペクトルの変化が現れた. (2)磁気的性質は,ルビジウムでは強磁性が観測されたが,ナトリウムでは反磁性が観測された.ナトリウムでは電子格子相互作用が強いために電子間斥力に打ち勝って,s電子は対を作り,その結果反磁性を示したものと考えた. 3.ゼオライトFAUでは,細孔がダイヤモンド構造で配列しており,LTAの単純立方構造と異なる.この様な違いがクラスターの構造と物性にどの様な変化をもたらすのかを現在研究を進めている.現在までのところ,光学的・磁気的性質に大きな変化が現れることがわかってきた.今後,その点について更に詳しく研究する.
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