研究概要 |
1.ゼオライトLTA中にナトリウム,カリウム,ルビジウムのクラスターを作成し,その光学的・磁気的性質を測定し,以下のような系統的な変化を見いだした. (1)ナトリウムクラスターでは,どのようなナトリウム吸蔵量に対しても常に反磁性を示すことが実験的にわかった.これは,ナトリウムでは電子格子相互作用が強く,電子は互いの反発力に打ち勝って対をつくり、スピンシングレット状態が安定となるためと考えられる.更に,縮退した軌道においても,ヤーンテラー効果がフント結合に打ち勝ち,やはり,スピンシングレット状態が安定となると解釈された. (2)カリウムクラクターでは,既に報告したように,中間のカリウム吸蔵量において,磁性元素を全く含まないにもかかわらず強磁性が観測された.更に,ルビジウムクラスターでは,ある吸蔵量以上で強磁性が観測された.しかし,その強磁性はカリウムクラスターと比較して弱くなった.これは,ルビジウムでは,5s電子に対するイオンの結合エネルギーが小さく,そのために,クラスターとしてのポテンシャルも浅くなると予想される.その結果,電子系は遍歴性を増大し,強磁性が弱くなったと解釈された.
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