研究概要 |
本研究は,希土類化合物やウラン化合物のf電子系に見られる強相関電子状態-ヘビーフェルミオン-と格子歪みとの相互作用に解明を目的としている.申請者は,極低温での超音波精密計測法を確立し,弾性定数の量子振動-音響的dHVA効果-の研究を進めてきた.音響的dHVA効果では,フェルミ面の極値断面積や有効質量のみならず,フェルミ面上の伝導電子と超音波によって誘起された格子歪みとの相互作用を定量的に観測でき,極低温,強磁場での実験が必要である.特にヘビーフェルミオン系では,申請者等が科学計測研究所で自作した大型希釈冷凍機(8mK)と超伝導磁石(15T)を用いている.比較的小さな有効質量をもつ希土類化合物の音響的dHVA効果の研究も重要であり,平成5年度の本研究補助金で購入した超伝導磁石(14T)と^3Heクライオスタットを用いた.^3Heクライオスタットに挿入する振動磁歪測定プローブも既に完成している.平成5年度には,片岡,後藤によって音響的dHVA効果の理論が確立した.これは,我々が長い間望んでいた応答理論が完成したことを意味し,変形ポテンシャルおよび多重バンド効果を求めることが可能になった.平成5年度には,LaAs,CeAs,TmSb,PrIn_3等の二軸ゴニオを用いた精密な音響的dHVA効果の実験が進み,応答理論を用いた解析が開始されたことは画期的な進歩であり,同じ物質でもフェルミ面により変形ポテンシャルおよび多重バンド効果は極めて個性的な振る舞いを示すことが明かになってきた.平成6年度からは音響的dHVA効果および振動磁歪を用いたヘビーフェルミオン系も含めて電子-格子相互作用の研究が飛躍的に進展すると期待できる.
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